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オムツ幻想曲 ある”レッスン” 原由貴子

「まあ、奥さま、ごらんなさいませ」
 女中のみつの声に、叔母の淑子は何事かと二階に上がってきた。

 美恵子の寝室に当てている、日当たりのよい南側の四畳半いっぱいに敷きはなした、明るい花模様の掛布団をみつがまくると、白いシーツの真ん中が大きくぬれている。
−−まあ、美恵子さん、十八にもなってオネショするなんて、困った子−−。

 美恵子は今朝もピアノのレッスンのため、朝早くご飯もそこそこにお友達とさそいあって、いそいで先生のところに出かけていった。何も言わなかったが、まさかオネショなんて……。
 きっと、自分でも恥ずかしくて言いだせなく、黙ってそのまま出かけてしまったのだろう。可哀いそうにと思うと、淑子は美恵子が帰ってきてもなにも聞かないようにみつに言いふくめ、手早く自分でお布団の洗濯にかかるのだった。

 高校3年生になり、来年受験する音楽学校の入学試験準備のため、美恵子は夏休み中、叔母にあたる淑子の家から音楽の先生のお宅へレッスンに通うことにしたのだった。
 叔母は子供がないせいか、美恵子のピアノの練習にしても、わがことのように熱心だった。毎日のお茶菓子にも気を配り、何くれとなく美恵子を世話した。来年はどうか音楽学校へ無事合格してくれればよいけれど……。
 しかし、昨晩食べたものが悪かったのかしらそれとも何か身体の具合が悪いのかしら、困ったわ……。彼女は、ひとり気をもんだ。

「ねえ、みつさん、美恵子さんはいったいどうしたのかしら。お医者さまに相談してみたほうがいいかしら。病気だったりしたら困るわ」
「奥さま、きっとお嬢さまは緊張しすぎたか何かでちょっと具合が悪かっただけでございましょ。何でもないと思うんでございますが……それとも、夜お休みの前にアイスクリームを召し上がったから、お腹が冷えたんでございますよ」

 みつは、三十半ばになるまで、この家で15年近くつとめていた。
 自分の若い時は、若奥さまがうらやましかった。美しい着物を着て、わがままもしてみたかった。淑子のところでは、よその家よりはしあわせだった。
 しかし若い娘達には、何かと競争意識を知らず知らずのうちに持ったこともあった。買い物のお供で外出したり、お茶やお花のおけいこ等はさせてもらったし、可愛がってもらったが、今度は美恵子がピアノのレッスンのため来てみると、やはり自分と違って奥さまに自然に甘えられるのがねたましかった。

「みつさん、お布団くらい自分でするわ。ママにしかられるわ」
「いいえ、お嬢さま。奥さまからもいわれてますし、みつがいたします。それよりどうぞピアノのおけいこに力を入れてくださいまし」

 みつは、美恵子の身のまわりの世話も、半ば意地になって自分でかってでた。
 しかし、胸のうちはおさまらない。そのうちに、美恵子に何か恥ずかしい、くやしい思いをさせてやりたいと思うようになった。
 しかしけっして美恵子が拒めず、奥さまも知らずに力をかすような方法はないだろうか……みつは、ふとめくっていた婦人雑誌で、夜尿症の相談の記事に目をとめた。

 まあ、大人になってもオネショってあるのかしら……そうだ、これがいいわ。
 もし自分のしたことがばれても、傷をつけるわけでなし、いたずらですませることができるし、お嬢さまも案外恥ずかしがりやだから、きっと黙っているにちがいない。
      *
「叔母さま、ただいま」
「美恵子ちゃん、お帰りなさい。今日はどうだったの?」
「ええ、今日はとても調子がよく、一曲進んで次のにかかったわ。先生もだいぶ上達したっていってくだすったの」
「そう、それはよかったわ。ところで、あなた、身体の具合は?」
「ええ、べつに」
「そう」

 美恵子は、叔母がいつも自分のレッスンや身体の調子に気をかけてくれるのがありがたいと同時に少しわずらわしく、もう少し無関心になっていてほしいと思うこともあった。
 しかし今日にかぎって身体の具合なんて聞かれ、ふとほおを赤らめた。

 あくる朝、美恵子の出かけた後、みつは黙って美恵子の布団を持って帰り、奥さまの横を通って風呂場へ洗濯に出た。
「またなの?」
「はい、奥さま」
「そう、困るわね」
 みつは、ジャブジャブと洗濯の水音を高く立てた。淑子は何か別のことを考えているようだった。
「みつさん、ちょっとあたし、病院の斉藤先生のところまで行ってくるわ。……美恵子ちゃんには何も言わなくてもいいのよ」
「どうぞ、いってらっしゃいまし」

  みつは洗濯を終え、掃除に取りかかった。奥さまも気にかけだした。もうそろそろ次の用意にかかってもいいころだ……。

 病院は朝のうちは混んでいたが、昼近くは静かで、待合室にはお婆さんや子供連れの主婦といった様子の3、4人しかいなかった。
 まもなく順番がきて内科の医務室に入り、かかりつけの斉藤先生の太って明るい陽気な姿を見ると、淑子は何かほっと気が楽になるのだった。

「やあ、奥さん、いらっしゃい。お元気そうですが、今日はなんですか」
「あの、先生、なんですの、ちょっとご相談が……家であずかっている親戚の娘のことなんですが先生、十七、八にもなってオネショするなんて、あるんでございましょうか」
「やあ、時にはありますね。ま、しかし別に気にするほどのことではないでしょう。一時的な緊張とか何かが原因ですな」
「でも先生、二、三日ずっと続けてですの」
「じゃ、さしあたってお薬を調剤しておきましょう」
「お願いしますわ」
「まだ続くようでしたら考えてみましょう」

 斉藤医師は眼鏡をはずし、ちょっとぬぐってかけなおした。そして、いつも送ってくるさまざまな医薬品のパンフレットの中に、エンゼル印ベビー用品の『羽衣商会』という広告があったのを思い出していた。
 そうだ、いざというときには市販品よりあそこに問い合わせてみれば、品物は間に合うだろう……。

 みつは、何かのひょうしに美恵子のランジェリーのサイズを聞いておこうと思った。
「お嬢さま、前より丈夫のようですね。あたあしですともうあまり変わりないんですが、まだ大きくおなりでしょ。あの、失礼ですがサイズはいくらくらいですか」
「まあ、いやなこと聞くのね。下着は○○インチよ。でも、このごろ、ちょっと太っているけど叔母さまのところでのんびりしすぎたせいかしら」

 その夜、みつは斉藤病院宛にとどくよう返信料を同封して、サイズや材料をくわしく指定した注文書を、婦人雑誌の広告で見たことあるベビー用品メーカー『羽衣商会』に出した。
 そして、いつかご近所の奥さまのおめでたのときに用意され、流産なさったとかでそのまましまいこまれていた、あの包みのことを考えた。
 うまく斉藤先生が奥さまにすすめてくださるといいんだが、もし駄目だったら自分で言ってみよう。お嬢さまのほうには、何も知らせないで事を運んだほうが、きっと効き目がある。
 こうして美恵子は、女中のみつのため叔母の淑子と斉藤先生の話題になっているとも知らず、午前の涼しいうちはピアノのレッスン、午後は涼しい木陰で本を読んだりテニスをしたりお友達とボートに乗りに出かけたり、高校最後の夏休みを楽しんでいた。

 四、五日たち、淑子は斉藤先生からの電話で病院まで出かけた。
「やあ、お嬢さんの具合はどうですか」
「……相変わらずですけど、私から何も聞けなくて困ってますの。感じやすい年頃ですし……」
「実は、こんなものを送ってきましてね。商品見本らしいんですが……まあ、これを使うほどもないかと思ったんですが、とてもお困りだったら一つ使ってみちゃ、どうでしょう……」
「何ですの、先生?」
「これですよ……」
「……」

 そして、淑子が斉藤病院の玄関を出るとき、小型の紙包みを一つ手にしていた。

 淑子は家に着くと、みつを呼んだ。

「ねえ、みつさん。ほら、いつかの、あの赤ちゃんのために用意したのがあったでしょ」
「ああ、ございましたわね。ご近所のお祝いがあったら差し上げられるようにとのことで、ちゃんとしまってございます」
「今日斉藤先生から呼ばれてね、美恵子さんにしばらくオシメをさせたらどうかって。これ、先生のところからいただいてきたの」
 みつは、淑子からつつみを受け取ってひろげた。
 やはり、そうだった。それは、斉藤病院宛に自分が注文しておいた、大人用のおしめカバーだった。黄色の薄ゴム張りにレースの縁取りも美しく、ピンクの地に花模様が可愛かった。
「まあ、可愛い。奥さま、これならようございますわ。ほんとに柔らかなゴムのこの手ざわり。さっそく、おしめも出しておきましょう。
 赤ちゃん用だから小さすぎるかしら。でも多分、間に合うと思うんでございますよ」
「そう、ちょうど斉藤先生宛に商品見本として送ってきたんですって。ピンクでほんとうにきれいね。斉藤先生にもすすめられたんだけど、美恵子ちゃんにどうかしら」
「いいんじゃございませんか。おしめのお洗濯のほうが、お布団より楽でございますし、長途お嬢さまに合いそうですね。
 私がお世話しますから、今夜からでもさっそくお嬢さまにオシメさせてお上げになったら」
「じゃやっぱりオシメも出しておいてちょうだい

 みつは思わず身を乗り出し、押入の奥の方からオシメの包みを取り出すと、まめまめしく支度にかかるのだった。
 ……さあ、美恵子にオシメをさせるのだ。いい気味だ。さぞ恥ずかしがるだろう。なんなら奥さまの手でなく、自分でさせてやりたい。
 淑子は、その派手なゴム張りのおしめカバーのホックをはずし広げながら、ふと手をとめた。
 大きくなって年頃なのに、まるで赤ちゃんのように、こんなオシメカバーでオシメさせられるなんて、なんだかかわいそうだ。さぞ美恵子は恥ずかしがるだろう。
 きっといやがるに違いないと考えたが、しかしすぐ、いやせっかくこんなきれいなオシメカバーを斉藤先生からいただいたんだし、みつさんのお布団の洗濯も大変だから、と思いなおし、みつが押入から取り出し、いそいそと差し出す青い花模様やピンクの豆絞りのオシメを広げて、オシメカバーの上に重ねてみるのだった。

「ねえ、みつさん、美恵子ちゃん恥ずかしくていやじゃないかしら」
「じゃ、奥さま、オシメの用意をしておいてあげるだけでよいじゃございませんか。きっとご自分でおあてになりますよ」
「そうねえ」
「じゃ、黙って用意だけしておきましょう」

 その日の午後、美恵子はお友達とテニスをしてきて、少し疲れた。夕方帰宅して、いつものように何気なくお夕食の膳に向かったが、この頃は叔母さまの家へきた頃よくいただいた果物とかジュース類が食後に出なかった。
「美恵子ちゃん、いつもビタミン剤、忘れずに飲むのよ」
「ええ」
「じゃ、お風呂わいているから入りなさい。お布団、ちゃんとみつさんが用意して敷いてあるから』
「はい、すみません」

 美恵子は、早速お風呂へ入った。タイルの浴槽に手足をいっぱいにのばすと、軽い疲れもどこかへ消え、温かい湯気の中で柔らかな石鹸の泡が、ふっくら白い身体を包むのが心地よい。
 すべすべした太股にうっすらパンティのゴムの痕がある。タオルで擦っても、桃色になるだけで消えない。まもなく美恵子は眠気をおぼえ、湯から上がってタオルで身体をふき浴衣を身にまとった。

「叔母さま、お先に」
「湯加減、どうだった」
「ええ、ちょうどよかったわ」

 とんとんと自分の部屋へあがり、姫鏡台に向かうと、クリームで軽くほおをマッサージし化粧水で顔をふく。まだそれほどおしゃれでないので簡単だ。
 ふり返って寝ようとすると、ふと枕元にきちんとたたんで置いてあるものに気づいた。何かしら……。
 その色とりどりの布が、赤ちゃんのするオシメであることに気づくのに、さほど時間がかからなかった。まあ、なぜこんなところにオシメが置いてあるのかしら。赤ちゃんがいないのに誰のかしら……しかし、どうでもよいことなのでべつに叔母さまに聞いてみようとも思わず、お布団に入りすぐスタンドを消した。
 目を閉じようとし、ふとお布団の中で何かざわざわ布のようなものが桃のところにあたるのに気がついた。動くとギュウギュウ音もする。
 何がはいっているのかしら。すぐ起きあがり、スタンドをつけ掛け布団をまくってみた。

 まあ……。

 スタンドの柔らかな光に照らされ、美恵子のお布団のちょうどお尻にあたるところに、薄ゴムのひだがキュウと腿と腰ひもの部分でくびれた、大きなゴム引きのオシメカバーがおかれ、その上に柔らかなおしめが縦横に重ねて広げられ、ちゃんとオシメの用意がしてあるではないか……。

  美恵子はびっくりして思わず息をのんだ。
 最初、美恵子はどこかの親類の赤ちゃんが来ることになっていて、自分が間違って赤ちゃんのために敷いてあるお布団へ入ってしまったのかと思った。
 しかしよく見ると、薄ゴム張りのそのオシメカバーは、普通の赤ちゃん用のにしてはかなり大きく、明らかに大人用のものである。発句の横の縁取りにも”16〜7歳用”としてある。
 これは、どうしたのだろう。いったい、誰のためのだろう。叔母さまが用意しておいたのかしら。
 しかし何のためだろう。オシメカバーやオシメがいる人はいないのに。
 美恵子は、まさか自分がみつのためにオネショのぬれぎぬを着せられているとは知らなかった。なんだか気恥ずかしいような妙な気持ちになり、それを取り出すと、枕元のオシメと一緒にお部屋のすみへおき、布団へはいるとまもなく昼の疲れですやすや軽い寝息をたてて眠ってしまった。

 翌朝、美恵子が出かけたあと、
「ねえ、みつさん、美恵子ちゃん夕べオシメして寝たかしら。ちょっと見てきてちょうだい」
「はい、奥さま」
 もちろん、美恵子にオネショなどという癖のないことは百も承知のみつは、さぞ美恵子は驚いたことだろう、と昨夜の様子を想像するだけで心をワクワクさせながら、様子を見に二階へ上がった。
 しかし、やはりオシメは部屋のすみに置いてあり、オシメカバーも使用した様子もない。……彼女は、また、美恵子のお布団を濡らしておく必要があった。

「奥さま、そのままになっております」
「そう。やっぱり、させたげなきゃあ駄目かしら。でも、もう一晩様子をみましょう」

 次の夜、明け方近くになって、みつはそっと二階へのぼり、ふすまをあけ美恵子の部屋へしのび込んだ。
 叔母の淑子がビタミン剤といって飲ませているお薬の効き目がないことどうしてもオシメの必要なことをいよいよ立証するのだ。
 みつは片手に魔法瓶を持ち、そっと静かに片手を美恵子の寝ているお布団のすそに入れてみた。
 今夜は、お薬はお医者さまからいただいたのではなく、その逆の効果をもたらすはずのものにすり替えておいたが、もし万一、何ともないと困る。しかし魔法瓶の必要はなかった。……眠り薬も効力があるようだった。

 翌朝、いつも朝早く起きてすぐ出かけるのに、その日に限っていつまでたっても起きてこない美恵子を、興すようにと淑子は声をかけた。

「美恵子ちゃん、まだ眠ってるの? みつさん二階へ上がって起こしてきてちょうだい」
「はい」
「……あの、奥さま、私が声をかけてもお嬢さまお目覚めにならないんですが」
「そう」
 二人は二階へ上がった
「あら、珍しく今朝はお寝坊ね。美恵子ちゃん、どうしたの。どこか体の具合でも悪いのじゃない?」
「お嬢さま、いかがなさったんでございまっすか?」
 淑子と一緒に、みつもしらばっくれて声をかけた。
「あら、私、どうしたのかしら」

 その声にやっと目が覚め、珍しく寝坊した美恵子は急いで半身を起こしかけ、お布団の中の異変にハッと気づいた。腰から下がじっとり濡れているではないか。

 まさか、まさか、あたしオネショしたんじゃ? しかしそのおそれは現実だった。そっとお尻のところにやった手が濡れたショーツにさわり気持ちが悪い。困ったように美恵子が赤い顔でもじもじしていると、淑子はすべてを察してやさしく言った。

「何か困ったことなの? 美恵子ちゃん、おばさんに何でも言ってちょうだい。あ、みつさん、いってていいわ」
「はい」
 みつはたくらみが図にあたったことで有頂天だった。あの困りよう、恥ずかしそうな様子、いい気味だ。今夜から、美恵子に公然ときまりの悪い思いをさせてやれる。その後の様子も気になったが、すぐ引き上げた。

「あの、叔母さま……」
「ああ、そうなの。いいの、いいのよ。何も言わなくてもわかったわ。でも美恵子ちゃん、おとといからせっかく用意してあげたのに、夕べもどうしてアレしなかったの?」

 美恵子はびっくりした。
 あのオシメカバーは、やはり自分のため用意されていたのだ。思い出してまた赤くなったが、しかしこうなることがどうして叔母に予想できてたのか、不思議でならなかった。
 もちろん、前からみつが自分のお布団をたたむ前にわざわざ濡らし洗って見せたりすることなど知らなかったのだ。
 寝床の中で恥ずかしくて顔も上げられない美恵子を、淑子は優しくいたわるのだった……。

「ねえ美恵子ちゃん。いい子だから、今夜から恥ずかしがらないでちゃんとオシメして寝るのよ。
 叔母さん、子供がいないでしょう、上手にあててあげられるかどうかわからないけれど、みつさんにも手伝ってもらえばきっとできるわ」

 美恵子は真っ赤になったまま、黙ってうつむいていた。日頃は陽気でお茶目で明るいが、ほんとうはひどく恥ずかしがりやなのだ。

 その日は、やがて先生のお宅へ出かけても心は落ちつかなかった。

「美恵子さん、今日はあなたどうしたの。いつものあなたに似ず、さっきからミスばかりしてますね。何かあったの? さ、もっと落ちついて、もう一度最初からやり直してごらんなさい」
 ピアノのレッスン中に先生から注意を受けたが、やはり心が動揺しているせいだろう、ミスが多かった。

 こうしてその日の夜がきた。お薬をいつものように飲まされ、お風呂から上がってお部屋へもどると、叔母の淑子とみつが、用意のオシメを手に持っていた。

「さ、美恵子ちゃん、いらっしゃい」
 その声に、おのずと美恵子は座った。
「あら、そんなところへ座らないで、お布団に入りなさい」

 叔母の淑子が、ピンクのオシメカバーの前ホックをはずし、みつが広げるオシメを重ね、お布団のシーツの上に広げるのを前に、美恵子はいやいやお布団に横たわった。

「さ、いいの? あ、脱がなきゃ駄目ね」

 白いシーツの上に広げられた可愛いオシメカバーは、美恵子の胸に遠い日の母に甘えた無意識下の記憶がよみがえり、不思議な甘い感動を呼び起こすと同時に、彼女の乙女らしい羞恥心を取りもどさせた。

「叔母さま、ごめんなさい。もうしませんからかんにんして」
 美恵子は体を固くし半ば鳴き声でこばんだが、いつもは優しい叔母が今夜は容赦しなかった。
「美恵子ちゃん、困るわ。みつさんのお布団のお洗濯も大変なのよ。ね、いい子だからオシメするまで、ほんのちょっとの間じっとしてるのよ」

 みつに両手を押さえられ、浴衣の前がはだけられ、二人がかりではいていた下のものを全部脱がされてしまうと、もういくらもがいてものがれられない。
 美恵子は観念の目を閉じ、あきらめと半ば甘える気持ちで、もうすっかり下半身を叔母のなすがままにゆだねオシメカバーの上におずおずと体を開いていった。

「さ、お尻を上げて。そうそう。内側がゴムだから、最初のうちはちょっとヒンヤリするかもしれないけれど、いいこと」

 みつのみている目の前で、いや進んでみつの手も手伝ってお布団の上で恥ずかしい格好をさせられた美恵子は、赤ちゃんのために用意されていたオシメがあてがわれた。
 それは決して小さすぎず、美恵子の腰部から股間を覆うのに充分まにあった。

「あら、まだ駄目よ、アンヨ広げるのよ。そうそう」

 お尻の下から両足の間へオシメがまわされ思わず両腿を固く閉じたときじーんと体の芯まで痺れるようなゴムの弾力感が伝わった。
 やがて下腹部全体がゴムの感触で包まれ、前ホックがかけられ淑子の手が腰ひもを締め終わるまで、美恵子は体がほてり腿がわれ知らずぶるぶるふるえてくるのを、どうしようもなかった。
 両足から腰全体を包むゴムの柔らかな感触。オシメをすることがこんなに快いことをいままで知らなかった。体全体がとけてしまいそうな快美感と、完全にオシメをあてがわれた安心感で、われ知らずからだがガタガタふるえてくるのだった。

「奥さま、ブルマーどうしましょう」
「そうね、美恵子ちゃん、オシメカバーの上からブルマー穿かせてあげましょうか。どうする? でも、せっかくこんな可愛いオシメカあてて、上から見えなくなるの残念ね。大丈夫よ、しなくってもいいよ」

 腰全体が不思議な感触でじんと痺れてしまい、美恵子はただ頬を紅潮させて吐息を吐くだけで、返事どころではない。

「さ、終わったからもういいよ。今夜から安心して眠れるわね。美恵子ちゃん、可愛い赤ちゃん、オシメしてネンネするのよ。じゃ、おやすみなさい」
「お嬢さま、おやすみなさい」

 お布団の中で、腰をはうむずがゆいようなやるせないようなゴムの肌触りに、美恵子は赤ちゃんにもどったような気持ちから次第に、いままで未知だった神秘な喜びの感覚に押し流されていた。

 翌年、春四月、音楽学校を受験する美恵子につきそって列車に乗った淑子のスーツケースの中には、ちゃんと幾組ものオシメとオシメカバーが用意されて入っているのを誰一人気づくものはいなかった。
 美恵子は、もう一晩でもオシメをしてもらわないと翌日は一日中、気持ちが落ちつかないようになってしまっていたので、叔母の淑子がみずから買って出て付き添いとなったのである。
 美恵子は受験の前夜、淑子の手によってオシメかぶれをふせぐため白くむっちりしたお尻から腿の間へシッカロールもちゃんとすり込まれ、特に念入りにオシメがあてがわれたのは言うまでもない。
 美恵子は上気した顔で、試験課題曲となっているショパンのノクターンを頭に描きながら目をうるませるのだった。

(「奇譚クラブ」1967年9月号)

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